森の少女

2014年08月10日 18:42



古いアルバムを見つけた少年


中身が気になって開いてみた


時間と共に薄れた色は


どこか寂しさを感じさせた



綺麗な女性に目を奪われた


長い髪に愛らしい瞳


隣には優しそうな男性の姿


2人の関係性にはあえて目を逸らし


ただただその女性に想いを馳せた



少年は深い森で年下の少女と出会った


『あなたのお名前は?』


『あなたはどこから来たの?』


『甘いものは好きかしら』



少年は少女にあまり関心がなかった


それでも少女は毎日少年に会いに来た


やがて季節は冬になり


小さな村は白い雪で覆われた


少年は森へは行かなかった


大人に行くなと言われたからだ


あの子もきっと森へは行っていないだろう


今日ばかりは少女のことを気にかけてみる



それから数日経ったある日のこと


少年が森へ行っても少女が来ることはなかった


大人たちの話によれば、


村が雪で覆われたあの日、少女は森へ行っていたのだという


少女はもう二度と、少年の手の届かないところへ行ってしまった


少年は不思議に思っていた


どうしてあの少女は毎日森へ行く必要があったのだろうか


そんなことばかりを繰り返し考えていたある日


ふいにあの古いアルバムを思い出した


少年は急いでアルバムを開き


写真を剥がして裏をみる


少年は言葉を失くしたかと思うと次の瞬間


喉が潰れてしまいそうな大きな声を上げ、泣き崩れた



写真の裏に書かれたメッセージ



『生まれ変わっても必ず探して見つけるからね。約束の森で毎日会おう』





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