御伽のカラクリ

2014年04月29日 15:08



むかし、むかし、あるところに



それはとても可哀想な少年がひとり



誰からも必要とされず



誰からも愛されず


温もりを知らずに育った少年は


いつしか自分の存在に疑問を抱いた




他のみんなとは違う


違うところはいったいどこなのか?



あの子にはあって


僕にはないところ


外見なのか


中身なのか


それとも他の何か



考えても答えが見つからなくて


それでも残酷な時間は巡る



僕の頭から流れ出たそれは


お婆さんが持っていた林檎の色で


僕の中で壊れた何かは


お姫様が履いていたガラスの靴のよう


遠くで微かに聞こえるそれは


小さな少女を求めた狼



最後に目にした大きな月は


僕の魂を映して沈む





 


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